当店ではカウチソファーを多く扱っております。
その場合カウチというのは、ソファーの中でも”足を伸ばせる部分のあるもの”、セットで”L字型をしているもの”を指しております。
ところが、お客様の中には、カウチというと二人掛けのソファーを思い起こす方もいらっしゃるようです。
この認識の違いは何からくるのでしょうか?
ここでは、そもそも”カウチ”とは何かについて改めてまとめてみたいと思います。
カウチとソファーは同じもの?
ウィキペディアの英語版で『sofa』を開くと『couch』のページに転送されます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Couch
アメリカ英語では、ソファーとカウチは同じ言葉を指すようです。
カウチという単語が、ソファーと同義語で一般名詞として使われているのは、主に北アメリカとオーストラリアであると記載されています。
アメリカ人に「カウチ」というと、日本人が一般的に思う「ソファー」全般をイメージするようです。
カウチの本来の意味
カウチという単語を英英辞書で調べると、様々な意味が含まれています。
ここでは一番目の意味を見てみましょう。
1.a piece of furniture for seating from two to four people, typically in the form of a bench with a back, sometimes having an armrest at one or each end, and partly or wholly upholstered and often fitted with springs, tailored cushions, skirts, etc.; sofa.
筆者概要訳:
二人から四人の人が座る家具の一つ。特に背もたれがあるベンチの形をしていて、時に肘掛けが片側もしくは両側にあるもの。そして一部または全体が皮(革)張りされていて、しばしばスプリングや揃いのクッション、裾布などが組み込まれている。又はソファ。
この項目においては、『Couch(カウチ)』はベンチ型のものであり、ソファーと同義語であることを指しています。
ですので、足を伸ばす形状をしたものをカウチと呼ぶ表現は書かれていません。
カウチは患者が横たわる椅子?
2. a similar article of furniture, with a headrest at one end, on which some patients of psychiatrists or psychoanalysts lie while undergoing treatment.
筆者概要訳:
ヘッドレストが片方にある家具の一種で、患者が精神分析医の治療を受ける間に横たわるもの。
と、「カウチ」が、かなり用途が特化された形状の家具のことを指しています。
足を伸ばす形状のものを「カウチ」というのはヨーロッパ
一方、イギリス英語では、日本人が思うソファーというものに対してソファーという単語を使っているようです。
同じくdictionary.comの、『couch (カウチ)』の項目でイギリス英語の場合(British Dictionary definitions for couch)を見てみましょう
1.a piece of upholstered furniture, usually having a back and armrests, for seating more than one person
筆者概要訳:
皮(革)張りされた家具の一つ、通常背もたれと肘掛けがあり、1人以上の人が腰掛けることができるもの。
アメリカ英語のカウチが”二人から四人が腰掛けるもの”と定義されているのと違い、イギリス英語では、一人以上の人が腰掛けるものとなっています。
2番めの項目は
2.a bed, esp one used in the daytime by the patients of a doctor or a psychoanalyst
筆者概要訳:
ベッド、とくに日中医者や精神分析医の患者が使うもの。
とあります。こちらはアメリカ英語と同じですね。
カウチという言葉の歴史
動詞としての『couch』は、12世紀の古いフランス語に、『couchier』という単語が「横たわる」という意味で現れました。
その後14世紀半ば以降、横たわるものを『coucher』として表現するようになり、伝統的には片側だけにヘッドレストや背もたれのあるものをカウチと呼ぶようになったそうです。
その後、『sofa(ソファー)』という単語も現れ、ソファーが両側に肘掛けがあり、背もたれのある形状のものを表すようになっていきました。
18世紀前後のフランスで、横たわるために座るものはサブベッドのように発展し、それが現在の『chaise longue(シェーズロング)』を指すようになっていったようです。
英語は語源を全てヨーロッパラテン語系にたどりますので、イギリス英語がその伝統を引き継ぎ、やがて文明開化後の日本に、欧州の家具文化とともに単語が入って来たものと思われます。
ただし、カウチという言葉を私達が一般的に耳にするようになったのは、日本では最近のことではないでしょうか。
カウチポテト族という単語として流行
英語はもともとイギリスが起源ですから、『couch(カウチ)』『sofa(ソファー)』といった単語もアメリカでも同じような意味合いで当初は伝わったはずです。
ではなぜアメリカではソファーのことを主に『couch(カウチ)』と呼ぶのでしょうか?
これは推測ですが、二人掛けのソファーをリビングに置き、横たわってテレビを見るというスタイルがアメリカの庶民の生活様式として、一般的だったのだと思います。
そして、動詞『couch(カウチ)』にもともと「横たわる」という意味があったため、その状態をカウチと呼んでいたのでしょう。
そして1979年に、『couch potato(カウチポテト)』という言葉が出現したのです。
当時は、ソファーに横たわって、テレビをみて動かず、ポテト(じゃがいも)のように太った若者が多く問題になっていました。そこから、アメリカ英語の流行語イディオムで『couch potato』が「怠け者」を表すようになったのです。
日本でも、その後80年代にはいり、アメリカのポップカルチャーと同時にその言葉がブームとなりました。
そして少し意味合いが変わり、二人掛けのいわゆるラブソファーでポテトチップを食べながらテレビを見ることを『カウチポテト族』として流行の一つになったのです。
そして、そのソファーが「カウチソファ」という名前で売りだされたりもしました。そのため、カウチ=二人掛けのイメージで捉える方も、ある一定の年齢層に多いのではないでしょうか?
まとめ
いかがでしたでしょうか?
つまり、『カウチ』と『ソファー』の違いは、語源からいうと、
『カウチ』が、端にヘッドレストのある、横たわる形式のもので、『ソファー』が背もたれと両肘掛けがあるものを指すようです。
ただし、アメリカではどちらも同じ意味で使われており、日本で2人掛けラブソファーのことをカウチと呼ぶ人も多いようです。
現在日本の家具業界では、足を伸ばせる部分のあるソファーセット全体のことを、『カウチソファー』という呼び方をしていますが、それは最近になってからのようですが、もともとの意味に戻っているようですね。
当社のCREW ZEROシェーズロングの形状などが、古きフランス語でいうカウチそのものといってもいいかもしれません。
深めれば深めるほど言葉は難しいく、興味深いですね。
これからもお客様のおっしゃる言葉と当社の認識に違いのないように、しっかりとご希望にそうように表現に気をつけなければ、と襟を正した次第です。